ヨガのレッスンが終わると私はいつも身体がひんやりします。
市立体育館のオープン教室。
終わって外に出ると、血糖値が下がっているみたい。
穏やかな晴天。自動販売機でホットティーを買い、体育館前の広場を歩きベンチを探して腰を下ろす。
それを買った自動販売機が遠くに見える。ついさっきまであの中にあったものが、今は手の中にある。とても遠いところのように見えるのは、背の高い木が間に何本も生えているからで、視界の中にどれくらいの木があるだろうと試しに数えるけれど、遠くの緑は木を個別に見ることが出来ず、幸福な気分になった。
木の幹に不安定に止まる鳥。鳴き声でそれがキジバトだと分かる。どの木も葉の色が黄色みを帯びて秋の気配。蝶もトンボも飛んでいる。広場に転がる落ち葉、コンクリートに落ちる木々の影。
思いの外、陽が暖かいので暑くなり、身体の向きをくるりと変える。
目の前には駐車場、そして空。
あまりに近く立体的に見えるので、私と雲しかいないみたい。そう思っていると、黒い小さな点が二つ。鳥だ。雲の中に入ってしまう、いや、そんなハズはない、と眺めていると、ふつりと消えた。
なんだか危ない。キラキラしすぎている。現実感がない。まだ一時間も経っていないはずだけど。
荷物を持って立ち上がり、歩き始めるけれど、足元の雑草の一つ一つが光って眩しい。こんなにいろいろな草が生えているなんて。
何回となく歩いたはずの道なのに、いちいち目新しい。こんなところにミラー。たわわに実が生った蜜柑の木。1階にも2階にも洗濯物を干している家。庭の木にぶら下げられたペットボトルが光を反射している。廃虚だと思っていた家にはベランダがあり洗濯物が干されている。柵を乗り越えて道路になだれ込もうとしている草。
白い柵で囲まれた細い川。川面はブロックの壁のずっと下に浅く流れているけれど、意外にも水が澄んでいる。川面から少しだけ上に咲く桃色の大きな花。私の視線に動じない鳩。
身体の感覚が薄弱になり、自分が幽霊になったように感じたけれど、なんとか家にたどり着いたのでした。
秋の澄んだ空気は意外にも危険。