さくら猫のミケちゃん

野良猫に餌をあげています。
というと、少し不穏ですね。
餌を上げているのは、ミケちゃんと私が勝手に呼んでいる猫、一匹です。

ミケちゃんは、
かなり前から、近所のパチンコ屋さんの駐車場に現れるようになりました。

で、声を掛けつつ1年くらい(たぶん)観察したところ、
子猫を産んでいる様子もなく、
年を取っているのか、あるいは過去に捕獲されて避妊手術を受けたようだと判断し、
こそこそと、貢物をあげるようになりました。

耳の先端が少し切れていて、最初は喧嘩でもしたのかと思いましたが、
いちど人が捕まえて手術した猫さんには、
獣医さんが耳をちょっと切るのだと知りました。
切り込みが入った耳が桜の花びら型なので、さくら猫。
まあ、切り口はまっすぐだったりもするらしいです。

お皿を持参して柵の下に置くと、ミケちゃんは柵の向こう側から食べます。
ミケちゃんが食べ終わったら皿も撤収。
ミケちゃん、この頃けっこうゆっくり食べてます。


人がいないときを狙うのですけれど、
この頃、どういうわけか三人の人に話しかけられました。

「ご飯、あげてるの?」
と、高齢のご婦人。
「はい。お皿持参で」
一時期、足を怪我していて心配したよね。
もう一匹、あちらの方にいるのよ。

別の日には、若い女の人が、
「私も毎日、あげてるんです」と。
他にも食べものを上げている人を見ますよね、と双方で報告。

「去年、足を怪我してましたよね」
というと、
「そうなんですよね。私、捕まえて病院に連れて行こうかと思いました。
 保護猫団体の人の捕獲用のケージ、借りなきゃダメかなって」

足が治って本当に良かったですね、と言い合ったのでした。
私は「保護猫団体にケージを借りる」を思いつかなかったですけれど。
ミケちゃんは、とてもとても用心深いので、
捕まえるのは無理だなあ、と思ったのです。

この方の話によると、
道路の向こう側にあった猫の集会場所、の猫たちは、
保護猫団体の人が捕獲して、飼い主が見つかったそうなのです。(よかった!)
しかしミケちゃんは人に懐かず、やむなくリリースされたということでした。
他の猫たちは、幸せで安穏な生活をしているでしょう。
ちなみに、私たちが話しているあいだ、
ミケちゃんは柵の向こうで距離を保ちつつも、
その場にいました。
自分の話をされているのが分かっていたみたい。
(これが擬人化ではないことは、
 猫や犬と暮らしたことのある人には分かりますよね)

声を掛けてきた三人目の女の人も、
「(猫を)見るのを楽しみにしているの」
と、おっしゃっていました。

 

基本的に猫は人と一緒に住むほうが、安全だし幸せだと思います。
飼われていても野性味を失わないのが猫ですし。
(他の動物に「野性味がなくなった」と嘆くのは、
 ちょっと身勝手なロマンティシズムだと思います。
 人間以外の生き物だって、安全だったらダラダラしますよね)

子猫のうちに人に触れないと、猫は人に触らせない、
と、何かで読んだ気がします。
ミケちゃんはそういう生粋の野良猫なのでしょう。

みんな、こそこそと餌をあげているのは、
「飼う」という責任を果たさず、可愛さを享受する後ろめたさ。
いや、ミケちゃんを飼えるならば絶対に飼いますけど。
保護猫活動をしている方々には頭が下がるし、
私が猫を飼うとしたら、ペットショップで買わないでしょう。

「野良猫が子猫を産むと、不幸な猫が増える」
のではなく、
「野良猫から生まれた子猫は、この国では不幸になる危険がかなり大きい」
と言えると私は思っています。
地面って、人間だけのものじゃないのに、
なんで「人に管理されていない犬/猫」が命の危険に晒されるのか。

ミケちゃんが足を怪我したとき、
「もし、捕まえることができたら」と想像しました。
すると、ミケちゃんが急に消えたことで心配する人が多いだろうなあ、
と、思えてきたのです。
(捕まらないですけどね)

ミケちゃんの幸せは、外で生活して、いろんな人に食べ物をもらい、
声を掛けられて暮らすことなのかもしれない、と思うことにしています。
(人生でも猫生でも「もしも」は無い)
そして、ミケちゃん(と、私は勝手に呼んでいる猫)を見ると嬉しくなるヒトが、
この近所に何人もいるのだなあ、と思うと、ちょっと嬉しくなります。

そして今日も、じーっとミケちゃんを眺めている人がいたので、
私は横目で見ながら通り過ぎました。

 

 

2件のコメント

  1. Tamakiさん、こんにちは。
    ミケちゃん、耳の先っぽを切られて
    可哀そうです。他に方法はないものか、と
    思います。もしそれが人間だったら、
    大問題になりますよね。

  2. medical_rodさま

    そうですよね、耳の先端。
    人間でもピアスを開けますから、
    まあ大丈夫なのかも、とも思うのですけれど、
    いきなり捕まったのは、怖かっただろうなあ、
    と思います。

    ほんとうに、殺処分などない、
    もっとよい方法を捜すべきだと思うのですけれど、
    今は動物保護の方々頼み、という気がします。

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