紐フェチ猫がきた

長年、猫と暮らしたいと思っていました。
そして昨年の秋、ついに譲渡会に行き、一匹の猫と出会ったのです。

「生後一か月前後のおとなしい雌猫」がいいなあ、と漠然と思っていたのに、
譲渡会で、シャアシャア鳴き騒ぐ、生後6か月の雄猫に、
「連れて帰って!」
と、目で訴えられました。
彼は、実家で一緒に暮らしていた猫のジャム君と同じ、鍵しっぽだった。

 

家に迎えた初日は、
ケージから「出して!」と大声で鳴くので外に出すと、
私の布団の周りをぐるぐる回るから、
「なんか、ヤバいものでも召喚してるのでは?」
と、マジで怖くなった。
なんか、とんでもない生き物を引き取ってしまったのかも………。

とはいえ彼は、
出されたものは何でも食べて、
人におとなしく抱っこされ、
話しかければ必ず返事をする猫だった。

彼には保護猫時代に付けられた名前があったけれど、
新たな猫生を送ってもらうため、
新しい名前を付けました。
「晴る」というイメージで、「ハル」。
不思議なもので、名前を付けた途端、
ああ、うちの猫なのだな、
と、何かがストンと腑に落ちたのでした。

 

ハルは3日ほどすると、落ち着いてきた。

と、思ったら7日目、帰宅した私の鞄に頭を突っ込み、そのままマスクの紐を食べた。
うろたえて、動物病院に連れて行く。
全身麻酔からの、胃カメラで紐摘出。
動物病院の先生は、
「食べようと思ったわけじゃなくて、驚いて飲み込んだのかもしれませんね」
とおっしゃったが、
以前、一緒に暮らしていた猫たちは、
異物を食べたりしなかったので、ものすごく驚いた。

その翌々日、
私が風呂に入浴剤を入れていると、
ててて、と歩いてきて、そのまま風呂に飛び込んだ。
そんな猫いるか?! 

 

猫が紐を食べると、最悪の場合は腸閉塞を起こすという。

その後もハルは、カーテンのタッセルの紐の部分を齧り、
紐でできたおもちゃの先端を食べ、
箱を開けて中のマスクの紐を齧り、
脱走防止ゲートを突破して、玄関の靴の紐を齧った。

なんというか、予想外のもの、知らないうちに食べている。
食べた直後なら胃カメラで取れるが(それも怖いけど)、
いつ食べたのかが分からないと、
病院に連れて行っても、
レントゲンを撮ってもらい、異常がないかを診てもらうことしかできない。

3回目に診てくれた獣医さん曰はく。
「かみ砕いて食べていたら、(ウンチをチェックしても)見つからないかもしれませんね。
 あと、隠している子もいます」
「えっ? そんなこと、あるんですか?」
「多いですよ」

ええ?
まあ、そうならいいけど。
幸い、ハルに異常はなかった。
本猫(ほんにん)も至って元気。
ありがたい。

 

「しつけ用スプレー」なるものを買いました。
無害の苦み成分のスプレー。
マスクの紐にスプレーして、テーブルの上に放置して観察してみると、
ものすごく苦いわけではないものの、
噛み続ける気にはならないようです。
家中の、紐という紐にスプレーしてます。


ネットで検索したら、”「異食症」という一種の病気です ”
と、出たけど、「異食症」って、ニンゲンの病名ですね。
猫の異食症の原因は不明。
紐を食べる猫、ビニールを食べる猫、タオルを食べる猫。
いろんな癖(へき)の猫がいるらしい。

「愛情不足」とか「母猫から早く引き離されたから」とか、
「ストレス」などが関係ある、、、かも?
という記載が多いかな。

しかし、私個人のイメージとしては、
フェティシズムに見えるのです。
(たまたま、『疾風怒涛精神分析入門 ジャック・ラカン的生き方のススメ』という本を読んでいたから………というのは、否めない)

 

とりあえず、ハルを猫かわいがり。
具体的には、いろんなおやつを買いそろえ、
撫でて撫でて、「かわいいねえ!」と褒めちぎっています。

その所為かハルは、
ドライフードの気分じゃないと、違うのが出てくるまで食べないし、
遊んでくれー! と鳴き(丸めた紙を投げてもらうのがお気に入り)、
抱っこを嫌がり、
呼びかけても、面倒くさいと返事をしないという、
猫らしい猫になってきました。

こちらとしては、ハルに求めることは、
「へんなものを食べない」
の一点になっている気がします。